77大間見雅楽

　　明治３７、８年の日露戦役に従軍した大間見高橋健治は、同隊の福井県石徹白村の人と親密になった。その縁で、真宗大谷派威徳寺の雅楽を大間見へ伝えた。
　「大間見雅楽」所有の楽譜帳表紙裏に、「左方雅楽頭従四位下、出雲守安倍朝臣秀延殿門人西之坊左京、安政２年（１８５５）　盛夏入門」とし、裏面に「石ド白威徳寺西之坊左京殿ヨリ、明治４４年１２月２８日入門」と伝授方が記されている。明治４４年１２月末、高橋健治以下８人が石徹白に入り、一冬泊り込んで威徳寺西之坊から習った。界わいにない厳格な習練でならした大間見神楽の若手連中ではあったが、まことに泣き出したくなるような厳しいものであったという。
　以来、清浄寺の報恩講には毎年奏楽し、旧弥富村地区の寺の仏事や村葬・招魂祭には欠かさなかったという。戦後は那留浄願寺や庄川村蓮生寺へ伝授し、九頭竜ダムで埋没する道場へも出張奏楽した。 安養寺の鐘堂供養・御遠忌には、応徳寺雅楽と相対に奏楽した。同じ左方楽でありながら、彼とは太鼓が異り９人一管という風に違う。
　平安の初め雅楽寮で左右の楽に統一されて江戸初期には地方へ流れ、江戸期末以降、応徳寺は尾張方面から、大間見は京都方面からの伝播伝承ルートで本町に入り、今日異質なような左方楽として存在する。両者共に父子相伝が続けられ、古典は厳格に守りながら民俗化か進んでいる。